守りの弱酸性と、素肌に戻る弱アルカリ性洗顔

公開日:2025年12月11日
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鏡の前で、あなたは今日、どんな顔をしていましたか?

朝、目覚めたばかりの無防備な顔。夜、一日を頑張り抜いて少しお疲れ気味の顔。その肌に触れるとき、私たちは無意識のうちに「何か」を手に取り、顔を洗います。

毎日のことだからこそ、なんとなく選んでしまいがちな洗顔料。「肌にやさしそうだから」という理由で選ぶこともあれば、「すっきりしたいから」と選ぶこともあるでしょう。

私は長年、生せっけんという不思議な石鹸の研究を続けてきました。その中で、何千、何万という泡に触れ、たくさんの素肌と向き合ってきました。そうして辿り着いたのは、洗顔とは単に汚れを落とす作業ではなく、自分自身の肌と対話する時間だということです。

今日は、洗顔料選びで誰もが一度は迷う「弱酸性」と「弱アルカリ性」について、少しだけ深く、けれど難しい話抜きにお話しさせてください。それは、あなたの肌が本当に求めている「心地よさ」を見つけるための、小さな道しるべになるはずです。

「守り」のベール、弱酸性のやさしさ

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お肌と同じ弱酸性」。この言葉を耳にしたことがない方はいないでしょう。

私たちの肌は、健康な状態のとき、弱酸性という性質を帯びています。これは、肌が自分自身で作り出した、とても薄くて繊細なドレスのようなものです。このドレスが、外からの乾燥や刺激から、あなたの柔らかな素肌を包み込んでくれています。

弱酸性の洗顔料は、この「肌がまとっているドレス」ととても相性が良いのです。

例えるなら、それは「ぬるま湯の中にいるような安心感」。

性格の合う友人と一緒にいるときのように、波風が立たず、穏やかな時間が流れます。肌の性質を変えることなく、そっと表面をなでるように洗う。だから、洗い上がりはとてもマイルドです。「洗った!」という強い手応えよりも、「ホッとする」ような安らぎがあります。

これは、肌がとても敏感になっている時期や、乾燥してどうしようもない時には、とても心強い味方です。肌が弱っていて、着ているドレスを脱ぐ元気すらないとき、弱酸性の洗顔料は、そのドレスの上から優しく汚れだけを拭ってくれるような、慎重な働きをしてくれます。

けれど、少しだけ立ち止まって考えてみてください。

私たちは毎日、汗をかき、皮脂という油分を出し、古い角質という「役目を終えた皮膚」を生み出しています。これらは、時間が経つと少しずつ形を変え、肌の上に居座り始めます。

弱酸性の洗顔料は、肌と同じ性質であるがゆえに、「肌に残すべきもの」と「不要になった汚れ」の区別をつけるのが、少し苦手な一面があります。あまりに肌と仲が良すぎて、本来なら「さようなら」をしなければならない汚れに対してまで、「まだここにいていいよ」と優しく許してしまうことがあるのです。

守ることは、とても大切です。でも、守りすぎることが、時には肌にとって「重荷」になってしまうこともある。まるで、季節が変わったのに、厚手のコートを脱げずにいるかのように。肌が少し息苦しさを感じているとしたら、それは「守り」の季節から、次のステップへ進む合図かもしれません。

素肌に戻る、「解放」の弱アルカリ性

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そこで登場するのが、「弱アルカリ性」の洗顔料です。 昔ながらの固形石鹸の多くは、この性質を持っています。

「アルカリ性」と聞くと、理科の実験を思い出して、少しドキッとするかもしれません。でも、心配しないでください。ここで言う弱アルカリ性とは、温泉のお湯のようなものだと思ってください。美肌の湯と呼ばれる温泉の多くが弱アルカリ性であるように、それは肌をゆるませ、ほぐす力を持っています。

弱酸性が「守る」洗顔なら、弱アルカリ性は「手放す」洗顔です。

私たちの肌についてしまった頑固な汚れや、毛穴に詰まった古い角質。これらは、酸性の性質を持っていることが多いのです。ここに、反対の性質を持つ弱アルカリ性の泡が触れると、どうなるでしょうか。

こびりついていた汚れが、ふっと力を抜くのです。 「もう、ここにしがみついていなくていいんだ」と、肌から離れていく。

ゴシゴシと力を入れてこする必要はありません。ただ、たっぷりの泡で包み込むだけで、汚れが自然と浮き上がり、水と一緒にするりと流れ落ちていく。それは、絡まっていた糸がスルスルとほどけていくような感覚に似ています。

そしてもう一つ、弱アルカリ性には大切な働きがあります。それは、肌表面に溜まった「古い角質」をやさしく手放すお手伝いをすることです。

肌は毎日、新しい細胞を生み出しています。それと同時に、役目を終えた細胞は垢となって剥がれ落ちていくのが自然な姿です。しかし、年齢を重ねたり、生活のリズムが乱れたりすると、この「手放す」力が弱まり、古いものが肌の上に留まってしまいがちです。これが、肌のごわつきや、なんとなく顔色が晴れない原因になります。

弱アルカリ性の洗顔料は、この古くなった角質だけを、穏やかに緩めて洗い流してくれます。

洗い流した瞬間、肌は一瞬、「無」の状態になります。 今までまとっていた古いコートを脱ぎ捨てて、生まれたての素肌が顔を出す。 肌が「深呼吸」をする瞬間です。

このとき、肌は少しだけ「キュッ」とするかもしれません。人によっては、それを「つっぱり感」と勘違いして、不安に思うこともあります。でも、研究家としての視点からお伝えすると、それは乾燥しているのではなく、肌が余計なものを手放して、クリアになった合図なのです。

何も纏っていない、まっさらな素肌。 それは、これから与える化粧水や美容液を、ぐんぐんと飲み込む準備ができている状態です。乾いたスポンジが水を吸い込むように、水分を迎え入れる準備が整った証拠なのです。

「守る」ことで安心感を得るか、「手放す」ことで本来の透明感を取り戻すか。 どちらが良い、悪いではありません。でも、もしあなたが、洗顔してもなんとなくスッキリしない、化粧水が馴染みにくい、と感じているなら、それは肌が「手放す」ことを求めているサインかもしれません。

なぜ、生せっけんは「弱アルカリ性」を選んだのか

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私は生せっけんを作るにあたり、あえて「弱アルカリ性」を選びました。 そこには、明確な理由があります。

大人の肌にとって、本当に必要なのは「汚れを落とすこと」と「うるおいを守ること」の、相反する二つを同時に叶えることだと考えたからです。

先ほどお話ししたように、弱アルカリ性は汚れを落とす力がとても優秀です。古い角質によるくすみを晴らし、肌を明るい印象に導いてくれます。しかし、その洗浄力の高さゆえに、洗い上がりにうるおいまで奪ってしまうのではないか、という懸念を持つ方もいます。

「汚れはしっかり落としたい。でも、洗い上がりはしっとりさせたい」

この矛盾する願いを叶えるために生まれたのが、「生せっけん」という形でした。

通常の固形石鹸は、固めるための成分が必要だったり、製造過程で熱を加えたりすることで、どうしても配合できる美容成分の量に限界がありました。しかし、私たちは「固める」ことを諦めました。その代わり、バターのような柔らかいペースト状にすることで、石鹸の半分以上、実に全体の半分以上を「保湿成分」と「美容成分」で満たすことに成功したのです。

これは、言ってみれば「美容液で顔を洗う」ようなものです。

ベースは弱アルカリ性。だから、汚れや古い角質は、肌に負担をかけずにふわっと浮き上がります。本来ならそこで肌が無防備になるところを、生せっけんにたっぷりと練り込まれた17種類ものハーブエキスや、上質な保湿成分が、間髪入れずに肌を包み込むのです。

汚れが去った瞬間の無垢な肌に、植物の恵みが降り注ぐ。

だから、洗い上がりは「さっぱり」としているのに、タオルで拭くと「もちもち」としている。つっぱるどころか、洗う前よりもうるおっているように感じる。それが、私たちが目指した、弱アルカリ性洗顔の理想形です。

肌が本来持っている「自ら美しくなろうとする力」を邪魔せず、余計なものだけを取り除き、必要なうるおいで満たす。

この生せっけんは、機械で大量生産するものではありません。私たちは、ひとつひとつ手作りで仕上げることにこだわりました。

それはまるで、シェフが繊細な料理を作るような工程です。 独自の「美容ハーブレシピ」に基づき、どのハーブを、どの順番で、どれだけの量を入れるか。そのすべてが厳密に決められています。料理と同じで、素材を入れるタイミングや混ぜ合わせるスピード、そのほんの少しの違いで、出来上がりは全く別物になってしまいます。

機械任せにはできない、繊細なバランス。 だからこそ、私たちは人の手で、レシピに忠実に、心を込めて作り上げています。そうして丁寧に作られたものだけが、あのとろけるようなテクスチャーと、肌が喜ぶ洗い上がりを実現できるのです。

生せっけんスティックという、新しい習慣

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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。 「弱アルカリ性の生せっけん、少し試してみたいかも」と思っていただけたなら、研究家としてこれほど嬉しいことはありません。

でも、同時にこうも思うかもしれません。 「生せっけんってやわらかいからジャー容器に入っていて毎回スパチュラですくって、泡立てるのは面倒くさそう…」

そのお気持ち、とてもよく分かります。 忙しい朝や、クタクタになった夜。どんなに良いものでも、手間に感じてしまっては続きません。洗顔は毎日のことですから、無理なく、楽しく続けられることが一番です。

そこで私が、最後にご提案したいのが、ルアンルアンの「生せっけんスティック」です。

これは、私たちが生み出した、ちょっとした発明品です。 見た目はまるで、大きめのリップスティックや、スティックのりのよう。 蓋を開けて、ダイヤル状のつまみをくるくると回すと、バターのような生せっけんが顔を出します。

使い方は驚くほど簡単です。 乾いた泡立てネットに、繰り出した生せっけんを直接当てて、こすりつけるだけ。 スパチュラもいりませんし、爪の間に入ることもありません。

そのあと、少しずつお水を含ませながらネットを回転させるよう動かせば、あっという間に、驚くほど濃密な泡が立ち上がります。 それは、泡というより、まるでホイップクリームやメレンゲのような、重みのあるクリームです。手を逆さまにしても落ちないほどの吸着力を持った泡が、あなたの顔をやさしく、ふんわりと包み込みます。

このスティックタイプなら、洗顔の準備にかかる時間はほんの10秒です。 けれど、出来上がる泡は、職人が手作りした本格的な生せっけんならではのもの。

顔に乗せた瞬間、ふわっと広がるハーブの香り。香りは脳に直接届き、張り詰めていた気持ちをふっと緩めてくれます。

泡を転がすように洗顔し、ぬるま水ですすぐ。 鏡を見ると、そこには、一皮剥けたような、つるんとした笑顔のあなたがいます。

「汚れを落とす」という作業が、「心地よい時間」に変わる。 肌が喜ぶのが分かると、明日の洗顔が待ち遠しくなる。

「守りの弱酸性」も素晴らしいけれど、時には「素肌に戻る弱アルカリ性」の心地よさを、あなたの肌で感じてみてください。

難しく考える必要はありません。 ただ、スティックを繰り出して、泡立てるだけ。 その小さな習慣が、あなたの素肌を、もっと自由に、もっと軽やかにしてくれるはずです。

もし、今の洗顔に少しでも物足りなさを感じているのなら。 この生せっけんスティックが、あなたの新しい「お気に入り」になれることを願っています。

あなたの毎日の洗顔が、幸せな時間になりますように。

生せっけん研究家
松田理沙 Lisa Matsuda

百貨店で美容部員としてキャリアをスタートし、2011年にルアンルアンの「生せっけん」と出会う。濃密な泡とハーブの力に魅了され入社し、「素肌美の近道は洗顔。」をテーマに泡の質や肌へのやさしさを研究。身体のケアにも視野を広げ、リラクゼーション技術の習得や、生せっけんの原点であるタイにも通いながら独自のスキンケアメソッドを築く。二児の母として、忙しい日々でも無理なく続けられる “シンプルで続くスキンケア” を提案している。

よくある質問(FAQ)


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