そのお客様は、お使いになるものを、とても慎重に選ぶ方でした。
私が担当していたのは、誰もが名前を知っているようなブランドではありません。
足を止めて話を聞いてくださったものの、最初は、どこか半信半疑だったのだと思います。
「これは、どこの商品なの?」
「どのようにつくられているの?」
「何を使っているの?」
その方が知りたかったのは、何に役立つ商品なのか、ということだけではありませんでした。
ご自身の肌に使うものだからこそ、
どのような考えでつくられ、なぜその成分が選ばれているのかまで、ひとつずつ確かめようとしていました。
お話を聞くうちに、その慎重さには理由があることが分かりました。
その方は、ご自身の肌をとても敏感だと感じていて、
やっと気に入ったものが見つかっても、使い続けるうちに肌が不安定になり、また別のものを探さなければならないことがあったそうです。
その方にとって化粧品を変えることは、ただ新しいものを試すことではなく、肌に合うものを一から探し直すことだったのだと思います。
私は、商品のことをひとつずつお話ししながら、実際にお肌で試していただきました。
すると、話を聞いていたときとは少し違う、うれしそうな表情を見せてくださいました。
「これは、よさそうかも」
そう言って、使い始めてくださったのです。
一か月、二か月、三か月‥。
その後も売り場へ足を運んでくださり、使い続けるなかで感じたことを、ご自身の言葉で聞かせてくださいました。
そして、半年ほど経った頃。
「前より、肌に透明感が出てきたように感じるし、
なにより、肌が不安定にならずに、これを使い続けられているの」
その方の言葉は、肌の話から、少しずつご自身の話へと変わっていきました。
「前は、気になるところに何かを重ねて、隠すようにしていたの。
でも今は、それをしなくても、自分の肌をちゃんと見られるようになった気がする」
その言葉を聞いたとき、私はとてもうれしかったのを覚えています。
透明感が出てきたことも、同じものを使い続けられたことも、もちろんうれしい。
けれど、それ以上に心に残ったのは、その方が、ご自身の肌について少しやわらかな表情で話してくださったことでした。