肌は、何によって守られているか。|洗顔のこと

お客様サポートセンターにいた頃、

「最近、くすみが気になるんです」
「乾燥するけれど、何を使えばいいでしょうか」

こうしたお肌のお悩みをご相談いただけることが多くありました。

電話やメールで、自分の肌のことを言葉にして伝えるのは、決して気軽なことではなかったと思います。それでも相談してくださる方に、少しでも役に立つことをお伝えしたい。そう思っていました。

当時の私は、表皮や真皮、ターンオーバーなど、肌の構造を表す言葉は知っていました。

けれど、それぞれが肌の中でどのように働き、目の前のお悩みとどう関わっているのか、自分の言葉で説明できるほどには分かっていませんでした。

お客様のお悩みに、もっと深く寄り添えるようになりたい。

そのためには、まず、肌のことをきちんと理解したい。

そんな思いから、私は肌の構造について学び始めました。

学んでいくうちに、私たちが毎日「肌」として見て、触れている場所は、ただの皮一枚ではないことが分かってきました。

いくつもの層が重なり、それぞれが異なる働きを担いながら、肌を支えていたのです。

肌をつくる、5人の仲間。

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私たちの皮膚は、表面にある「表皮」と、その下にある「真皮」、さらにその下の「皮下組織」から成り立っています。

今回は その中から、私たちが毎日の洗顔で触れている表皮と、その下で表皮を支えている真皮に目を向けます。

表皮はさらに、働きの異なる4つの層に分かれています。

肌構造-スポンジ

それぞれがどのような働きをしているのか。表皮をつくる4つの層と、その下にある真皮を、5人の仲間に見立ててご紹介しますね。

角質層_イラスト

私は表皮のいちばん外側。肌の水分を保ち、外からの刺激を受けにくくする働きに関わっています。

顆粒層_イラスト

私は角質層のひとつ手前。細胞が形や働きを変えながら、肌を守る角質層になるための準備を整えています。

有棘層_イラスト

私は基底層のひとつ上。基底層で生まれた細胞たちが、互いにつながりながら、形や働きを変えていく場所です。

基底層_イラスト

私は表皮のいちばん下。新しい表皮の細胞が生まれ、少しずつ上の層へ移っていく出発点です。

そして、表皮の下にいるのが真皮です。

真皮_イラスト

私は表皮の下から、4人を支える役。肌の強さや弾力を支え、表皮に必要な栄養や酸素を届けることにも関わっています。

5人のうち、表皮をつくる4つの層(基底層・有棘層・顆粒層・角質層)は、それぞれ別々に働いているわけではありません。

基底層で生まれた細胞は、有棘層で細胞同士がつながりながら形や働きを変え、顆粒層で角質層になるための準備を整えます。

その後、平たくなった角質細胞として肌のいちばん外側を覆い、やがて表面から少しずつはがれ落ちていきます。

このように、表皮の細胞が生まれてから形や働きを変え、最後にはがれ落ちるまでの一連の流れを “ターンオーバー” と呼びます。

その流れのいちばん外側にある角質層は、私たちが毎日直接見て、触れている場所です。化粧品の成分が「浸透する」と表現できる範囲も、基本的にはこの角質層までです。

毎日の洗顔も、この角質層に直接触れる行為です。

そう考えると、私は、角質層がどのような仕組みで肌を守っているのか、もっと詳しく知りたくなりました。

いちばん外側の、薄い角質層。

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角質層について調べて、まず驚いたのが、その薄さでした。

部位によって違いはありますが、顔の角質層の厚さは、約0.02mmと表されることがあります。食品用ラップを思い浮かべるほどの薄さです。

けれど、その薄い場所には、肌のうるおいを保ち、外からの刺激を受けにくくするための仕組みがあります。

その仕組みを支えているのが、角層細胞・細胞間脂質・天然保湿因子です。

名前だけを聞くと少し難しく感じるかもしれません。そこで、それぞれが角質層のどこにいて、どのような役割を担っているのか、一つずつ見ていきます。

肌構造_2

角層細胞_イラスト

私たちは、普段『角質』と呼ばれているものの一部です。薄く平たい形で何枚も重なり、レンガのように肌の表面を覆っています。

天然保湿因子_イラスト

私は、角層細胞の中にいます。水分を抱え込み、肌の表面のうるおいを保つことに関わっています。

細胞間脂質_イラスト

私は、角層細胞と角層細胞の間にいます。レンガのすき間を埋める目地のように並び、肌の水分が逃げすぎないようにする役割があります。

角層細胞が何層にも重なり、その間を細胞間脂質が満たす。そして、角層細胞の中では天然保湿因子が水分を抱えています。

こうした仕組みによって、肌の中から水分が逃げすぎるのを抑え、外からの刺激を受けにくい状態が保たれています。

これが、肌のバリア機能を支える大切な仕組みです。

さらに、角質層の表面は、皮脂と汗などが混ざり合ってできる「皮脂膜」にも覆われています。

角質層と皮脂膜は同じものではありませんが、どちらも肌の表面で、うるおいを保つことに関わっています。

肌は、何か一つだけに守られているわけではない。

薄い角質層の中と、その表面にあるいくつもの仕組みが重なることで、毎日触れている肌は守られているのだと知りました。

そして私は、その角質層が乾燥すると、肌にはどのような変化が表れるのか、知りたくなりました。

乾燥やごわつきが気になるとき、角質層では‥

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角質層が乾燥しているとき、そこで働く3人(角層細胞・細胞間脂質・天然保湿因子)がいなくなってしまうわけではありません。ただ、水分を保ちにくくなったり、肌の表面がいつもと違って感じられたりします。

肌の状態は、季節や年齢、その日の体調などによっても変わります。それに加えて、毎日どのように洗っているかも、肌の乾燥に関わることがあります。

たとえば、熱いお湯を使ったり、必要以上に何度も洗ったりすること。

使う洗浄料や洗い方によっては、角質層の細胞間脂質や天然保湿因子が失われやすくなり、肌の乾燥につながる場合があります。

肌構造_3

角質層が乾燥すると、肌の表面にある古い角層細胞のはがれ方にも、変化が起こることがあります。

本来、古くなった角層細胞は、肌の表面から少しずつはがれ落ちていきます。

ところが、角質層の水分が不足すると、一つずつ自然にはがれにくくなり、古い角層細胞がまとまって表面に残ることがあります。

それが、ごわつきやざらつきとして感じられたり、肌の表面がなめらかに見えにくくなったりする場合があります。

肌構造_3

お客様から「くすみ」が気になると伺ったときも、私はその言葉だけで肌の状態を決めないようにしています。

いつ気になるのか。乾燥やごわつきも感じているのか。毎日、どんなふうに顔を洗っているのか。

肌がくすんで見える理由は、一つではありません。ただ、表面が乾いてごわついているなら、角質層の状態も確かめてみたい。

以前、その状態をお客様にお伝えするため、身近なものに例えてお話ししたことがありました。

乾いたスポンジに例えて。

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お客様サポートセンターで、50代のお客様からオンラインで「肌が強張りやすくなっている」とご相談をいただいたときのことです。

私は、乾いたスポンジを思い浮かべていただきながら、肌の状態をお話ししました。

水分を含んだスポンジは、触れるとやわらかい。一方、乾いたスポンジは硬く感じます。

もちろん、肌とスポンジは同じつくりではありません。ただ、角質層のうるおいが不足したときに感じる強張りやごわつきを、イメージしていただくための例えでした。

肌構造_3

お客様には、肌をやわらかく保ちながら、乾かさないケアをご提案しました。肌の状態をお話しすると「さっそくやってみます!」と言ってくださったことが、今も印象に残っています。

あのときお伝えしたのは、主に肌の状態とうるおいを保つためのケアです。

一方で、洗顔研究家としてこのお悩みを考えると、私にはもう一つ気になることがあります。

強張りやごわつきを感じている角質層に、毎日の洗顔でどのように触れているだろう、ということです。

洗顔だけで角質層をやわらかくできるわけではありません。

それでも、汚れを落とそうとして強くこすったり、熱いお湯で洗ったりすることで、乾燥しやすい肌へさらに負担をかけていないかは見直すことができます。

角質層のことを知ってから、私自身が変えたのも、毎日の洗い方でした。

角質層を知って、洗い方が変わった。

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洗顔では、一日の汚れや余分な皮脂をきちんと落としたい。

けれど、そのために、指先で肌をこすり続ける必要はありません。

私は、泡を使うときの手の動きを変えました。

泡を顔にのせたら、泡をクッションにして、手のひらでやさしく押すように触れる。

私が大切にしている “プレス洗顔” です。

すすぐときは熱いお湯を避け、洗浄料が肌に残らないよう、丁寧にすすぐ。

特別な道具を増やしたわけではありません。

汚れを落とすことだけではなく、その下にある薄い角質層に、今どのように触れているのかを意識するようになったのです。

角質層の仕組みを知ったことは、私にとって、洗顔を「何で洗うか」だけで考えなくなったきっかけでした。

洗っている間、手はどのように動いているだろう。

泡と肌の間で、力が入りすぎていないだろうか。

きれいにしたいという気持ちが、肌を急いでこする動きになっていないだろうか。

洗顔料を選ぶことと同じくらい、毎日どのように洗っているかにも目を向けるようになりました。

肌を守っているもの。

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肌は、何によって守られているのでしょうか。

肌全体の働きを、角質層だけで説明することはできません。

表皮では細胞が生まれ、形や働きを変えながら角質層へ移っていきます。その下では、真皮が肌の強さや弾力を支えています。

そして、私たちが毎日見て、触れている肌の表面では、角層細胞が薄く重なり、その間を細胞間脂質が満たしています。

角層細胞の中では天然保湿因子が水分を抱え、角質層の表面は皮脂膜に覆われています。

どれか一つだけが肌を守っているのではありません。

いくつもの仕組みが重なり合い、肌の中から水分が逃げすぎるのを抑え、外からの刺激を受けにくい状態を保っています。

お客様の乾燥やくすみの相談に、もっと役立つことをお伝えしたい。

そう思って調べ始めた肌の構造は、私自身の洗顔を見直すことにもつながりました。

洗顔は、肌の上にある汚れや余分な皮脂などを落とすためのものです。

同時に、肌を守る仕組みがある、そのいちばん外側へ、毎日直接触れる時間でもあります。

何を使って洗うかだけでなく、どのような温度のお湯で、どのくらいの力で、どのように触れているのか。

肌の仕組みを知ったことで、私にとっての洗顔は、ただ汚れを落とすだけのものではなくなりました。

今日、顔を洗うとき。

泡の下にある薄い角質層と、そこで肌を守っている仕組みのことを、少し思い出してもらえたら嬉しいです。

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