

今になって振り返ると、当時の私にとって、洗顔はただ毎日当たり前にするものでした。
欠かさずしていたけれど、「洗顔で肌を整える」という考えはなく、漠然と、スキンケアの前にやっておくこと。
洗顔そのものに、何かを期待することもありませんでした。
肌を整えるために私が目を向けていたのは、そのあとに使う化粧水や美容液でした。
肌が乾燥していると感じたら、うるおいを補うもの。
不安定になっていると感じたら、できるだけ負担をかけにくいもの。
肌が気になるときほど、次に何を使えばいいのかを考えていました。
美容部員として化粧品や成分について学ぶようになってからも、その視線は大きく変わりませんでした。
お客様からお悩みを伺うときも、自分の肌に違和感を覚えたときも、頭に浮かぶのは、何を補えばいいのだろうということ。
その一方で、毎日していた洗顔については、立ち止まって考えたことがありませんでした。
簡単に泡をつくり、顔を洗う。
最後はシャワーを顔に当て、すすぎも手早く終わらせる。
忙しい日も、そうでない日も、それがいつもの洗顔でした。
だから、あの夜も、洗顔に何か答えを求めていたわけではありません。
仕事に疲れ、今日はゆっくりお風呂に浸かりたい。
そう思って湯船で過ごしているうちに、いつもより 身体を動かす速さまでゆっくりになっていました。
いつもの洗顔石鹸を手に取り、泡立てる。
できた泡で、急がずに顔を洗う。
そして、いつもより時間をかけてすすいでいく。
肌のために、丁寧な洗顔をしようと思ったわけではありません。
疲れていたから、いつもの洗顔までゆっくりになった。
けれど、結果として、その夜の洗顔は、いつもよりずっと丁寧なものになっていました。




















